レーダー:乳製品価格の上昇と市場への影響
フードケミカル
脱脂粉乳,カゼインなど乳製品の値上がりが表面化してきた。原料乳の主産地である北米・オセアニアでの生産量が伸び悩む中,インドや中国からの大規模なスポット買いやさまざまな要因が重なったためだ。大手サプライヤーは脱粉の生産に主力を傾けているが需要には追い付かない状況で,原料の出ないバター,チーズ,タンパクなどの需給も急速にタイト化しつつある。短期での供給量回復は困難であるとの見通しから,サプライヤーの多くは1~6月荷積みの商品から,段階的な値上げを表明している。
乳製品価格は,乳糖を中心に高騰した07年後半~08年前半のレベルから急速に下落し,最近では高騰前の水準まで戻してきていた。高騰による需要離れ・市場の縮小が起こったことなどが要因といわれている。しかし価格が落ち着いてきても,生乳生産量の伸びは依然停滞している。ニュージーランドを中心とするオセアニアでは数年来干ばつや夏季の熱波が相次ぎ,乳牛の増加にはつながっていない。今期も,ニュージーランド北島では干ばつが起こっており,オーストラリアの気候も芳しくないようだ。一方米国では,乳価の下落による酪農家の生産コスト割れで,昨年は全米で乳牛約10万頭を屠殺するなど生乳生産に対するモチベーションが低下している。昨年秋ごろまでにこうした問題は指摘されていた。
決定的に需給バランスを崩したのが,メラミン混入問題の後遺症から回復しつつある中国と,モンスーン期の降雨不足によって一部の地域で農業生産に深刻な影響を受けたインドからの大規模なスポット買いだ。世界有数の人口を擁する2国の購買力の影響は大きく,サプライヤーの生産も主に需要が旺盛な脱脂粉乳にシフトした。このため脱粉と原料を同じくするカゼイン・カゼイネートのほか,チーズやバターも減産傾向にある。脱粉については,EUにおいて政府の買い取りを狙った生産調整が行われていること,またEUからの輸出補助金が10月からゼロになったことで,価格の吊り上げも顕著になってきている。生産地全体が脱粉に注力しているものの,原料乳の確保が十分ではないため,依然タイトな状況になっているようだ。
現在,各産地のサプライヤーは今期(1~6月)の荷積み分について値上げの交渉を進めている。前回の反省を踏まえて在庫を過剰気味に持つユーザーも多く,各国の在庫切り替えの時期がたまたま一致しての買い圧力だという可能性もあることから,07~08年の高騰水準まではいかないというのが業界の大方の見方だが,カゼイネートはニュージーランド品の落札価格がトン当たり1万ドル,脱粉も3,200ドルを超えるなど,少なくとも08年上期の水準までは値上がりする可能性が高い。バイプロである乳糖も出の悪い状況が続いており,キロ当たり30円程度の値上がりが予想されている。インドや中国の需要が今後どうなるかも明確ではなく,海外の需給や為替の値動きによってはさらにタイトになる可能性も否定できない。国内ではPB品の乳製品や畜肉加工品を中心に乳タンパクの需要は堅調だが,今後の値上がりにユーザーがどこまで妥協するかとの不安もあり,市場には不透明感が広がっている。
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フードケミカル
2010年2月号
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